鬱状態を発生させていたのは育った環境
社会人になり10年が経ち、体調の変化を感じうつ状態で、心療内科のお薬を服用している方から来談カウンセリングの問い合わせが入った。
初回の来談時では、気持ちが下がり時々死にたくなりこれからのことが不安になると話していた。
とても優しい心を持っていることは初回の来談で分かっていた。
争いごとが嫌いで人前で自分を主張することが苦手という。
成長過程からヒアリングをはじめた。
来談者の両親は共稼ぎで子供にも高い教育を望んでいた。小学校から英語塾に行ったり、私立中学校受験のための塾に通い勉強の毎日を過ごしていた。
父親は小学校まで勉強を見てくれたが解けない問題がでてくると、出来ないと怒り出しそれがとっても怖くて勉強が身につかないし父親まで嫌いになった。
塾に行きたくない時、休みたいと親に言うと母親は、
「あなたが塾に行きたいと言ったのでしょう。あなたが決めたことだから行ってください」
と厳しく言ってくるため何も言えなくなった。
そのように何事にも親の意見には絶対服従で、もし守らなかったら怒られるため本人の気持ちが嫌でもかたくなに守っていた。
家庭では静かで騒ぐことなく静かに言葉なく食事をしてすぐ自分の部屋に戻る。
自分の部屋が安住の場所だった。
思春期になってもそのスタンスは変わることは無かった。
親に逆らった記憶はないし反抗期もなかったように思う、と話す。
とにかく何事もないように静かに過ごしていた。
兄弟はいたが親しく話すこともなく一人っ子のような状態だったので今でも親しく話すことはない。
用事があれば連絡を取り合う程度である。
母親からは、
「あなた達が成人したら親は離婚するから」
といつの頃からか言われていた。
成人したら言葉通り離婚してしまった。
前から言われていたからやっぱり本当のことだったと思うだけで何の感情もわかなかった。
母親からは父親の悪い所を聞かされていたので、何となく父親が悪いから離婚になったと思い込んでいた。
母親に対して逆らうと怒り出すのでそれが嫌でもケンカしてまで反抗する気もなかった。
社会人になって結婚して母親からも距離を持つようになって少し客観的に見られるようにはなったが、母親から何かと一方的な言い方や指示されることに対しては抵抗こそあったが結果的には従っていた。
父親に対しては、母親から嫌なことばかり聞かされているので親の離婚後もほとんど会っていなかったし会おうとも思わなかった。
社会人になってからも気持ちがうつ的になったりしている。
心療内科の薬は飲んでいるが何とか自分で治したいと思い、カウンセリングを受けることを決めた。
初めてでもあるので緊張したが話していくうちに自分がどうしたいのかが少しずつ分かり始めた、と語るようになってきた。
カウンセリングでは、自分をしっかり持つことですとだけアドバイスを行った。
本人なりに言葉の意味を理解しようとしたことはみてとれた。
自分は今まで、母親の指示に従っていれば波風もなく特に困ることもなかった、と話す。
自分で判断して行動することが子供のころからなかったことに気付いた。
自分からこうしたいと言う強い気持ちもないので、大人になってからも母親のいうことに素直に従っていた。
カウンセリングを受けることで、自分はどうしたいかとはっきりした気持ちが浮き出てきたと話す。
自分の意思を行動に移し始める
今の会社の仕事はやりたくないんだ。
就活して自分の価値を見てみたいと思い立ち動き始めた。
厳しいシュウカツになることは覚悟していたが幸運にも数社から引きがあり自信もでてきたので、勇気を出して就活に臨んだ。
半年後新しい会社が決まった。
喜んでくれると思い意気揚々と母親に話したら、
「何も変えることないのに」
と吐いて捨てるように言われ母親にイラつきを覚えた。
その後、家族でお付き合いしていた方のお祝いごとがあり母親から世話になったからお祝いの金額の指定があった。
その金額は自分たちの家庭では高額なのでもう少し安くしたいと話すと母親は怒り出したので、ケンカになるのも嫌なのでまた従った。
何か問題が起こると母親から指示が出るので、母親のご機嫌とりはもうやめたと強く自分に言い聞かせた。
自分に自信が出来てくると行動を起こすことに心がワクワクすることを初めて感じた。
就活を始めた時も何か心がワクワクしていた。
親の指示に反抗したことは初めてのことだった。
新しい会社に移るまでしばらく時間が取れたので、のんびり自分のことを考えたり今までの生い立ちや何故 親は離婚したのかなとか考えていた。
頃合いをみて、
「お父さんに勇気を出して会ってみたら」
と伝えてみた。
すると、初めは嫌だと思ったけど父親のこと何も知らなかったと思い、何日か考えていると急にあってみたいと思い連絡を取った。
父親は喜んでご飯を食べながら今まで謎だったことをあれこれぶつけてみた。
すると父親は怒ることも無くみんな話しをしてくれた。
そこにいたのは、今まで自分が思っていた父親ではなかった。
会っていてとっても楽しかった。
またたく間に時間が過ぎてしまい再会を約束してその日は別れた。
いやな父親像が崩れいい人なんだ良かったと思い自分の心の中が明るくなり機会を作って自分の家族も見てもらいたいと思った。
楽しい時間を過ごしたがに母親には、
「お父さんにあって食事して話をしてきた」
とはまだ言えてない。
母親が怒ることはわかるので、そっとしていると話す。
少しずつ自分の考えで行動をしている姿に頼もしさを感じていた。
成功や失敗はあまり気にしないでいいと思う。
自分でしたいと思うことを考え実行することに生きる意味がある。
初めてカウンセリングを受けたいと来談した時はか弱く思えたのに今は力強くなり自分のやりたいことがしっかり言葉に出して言えるし行動も伴ってきている。
親の指示から抜け出て自分の世界を作り出している。
カウンセリングは本人の希望もあり定期的に行っている。
自分の考えをしっかり受け止めてもらえるだけで勇気が湧いて来るんだ、と話している。
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