次女が摂食障害で登校できなくなる
娘の異変に気付いた母親からのカウンセリング依頼が入った。
現在、高校在籍中である娘の体重が激減したことで家族は摂食障害を疑っていた。
病院で受診したがこれ以上体重減少したら入院になりますと言われた。
体重を増やすため食べるようにと言われているが本人はスマホで食品のカロリーを調べ食べるものを選んでいる。
摂食障害ははっきり原因がわからないことが多いので回復するまでに時間がかかりリバウンドもあるので安易には回復しないと言われている。
今迄は思春期にあるダイエットだと思い気にも留めなかったが娘の幼稚園児時代を思い出すと食欲もあまりなく何事においても神経質だったことに気づきこのままでは深刻な問題になってしまうと危惧感を抱きカウンセリングを受けてみようと思った、と話す。
すべてに消極的で黙っているのでおとなしい子と思っていた。
2人の子育てをしているがお姉ちゃんは積極的な性格で小さいころから手がかからず誰からも褒められていた。
次女もそうなるだろうと当たり前のように考えていたのだが年齢を重ねるうちに何を考えているのかわからないことがある次女はいつもお姉ちゃんと比べられていたように思うと話し始めた。
子供ながらにかなりの劣等感を持っていたのではないかと反省していた。
母親は同じようにしているつもりでも何かとおねいちゃんと比較してしまっていたのでないかと気に悩んでいた。
お姉ちゃんが妹には説教じみたいい方をするので、妹は遊んでいてもびくびくしていた。
母親は次女が家族にも気兼ねをしていることに気づかず大きく成れば消極的な性格も治ると軽く考えていた。
親への要求も少ないのでどうしても家族からも注目されずにいた。
そして急激な体重減少に驚く
体重減少以外は特に変化はなかったが今思うとほとんど食べていないことに気づいた。
診察をしてもらうと現在の体重は30キロ代をかろうじて保っている状態なので要注意であった。
ドクターストップにより登校を一時的に控えることになり家で食事担当になる。家ですごす時間がふえたことによりわかってきたことがたくさんあった。
炭水化物(ごはん・パン麺類・芋類)は食べない。
肉類もほとんど食べない。
本人は朝6時、昼12時、夜6時に家族全員が集まって食べることが良いと思い込み家族にそれを強いるようになってきた。
次女は消化の良いものを中心に作るので他の家族にはおいしいと思えない献立が多くなっていた。
時間通りに家族全員が集まって食べることには無理があるし時間の経過と共に他の家族がそのことにストレスを感じ始めていた。
次女は献立やカロリーの検索はスマホから情報を得ているので親の話は聞き入れない。
炭水化物(ごはん・めん類・パスタ・芋類)は食べず、おかずをすこし食べている。
家族は娘さんの食事時間や献立を強要させられることにストレスを感じているが言えないでいる。
昼食は母親と一緒に取るがストレスを感じてしまう、と話す。
献立も限られたものになるため娘から家族一緒に食べるようと言われても本心では複雑な心境で楽しんで食べられない。
本人は家族一緒に食べることを望んでいるので休みの時は家族がそろうようにしているが母親もストレスがかさむと言う。
母親は何が原因かもわからないし話し合いをしようにも本人は何もないと言うばかり。
次女の問題ではあるが母親も相当に参っていることはすぐにわかった。
このような場合は本人に過去の振り返りをしてもらうことで原因を明確にすることで問題が改善することがある。
そこで母親に子供たちが小さいころの話をしてもらうように水を向けてみた。
小さいころからお姉ちゃんがほとんどしゃべっていたので妹が率先してしゃべることはなかった。
親もあまり気にせず話を深堀するような聞き出しもしなかった。
お父さんはしつけに対してうるさいわけではなかったが特別かわいがることもなかった。
小学校を卒業したあたりから次女は自分の世界を作り家族ともあまり関わりを持たなくなっていたようだ。
特に太っていたわけではないが痩せてる姿がきれいと思ったのかある時からダイエットしていた。
だがその時期も家族ははっきりわからない。
勉強もしっかりやるので希望の高校にも入学できた。受験中も自分で時間を考えながらやっていたので手はかからなかった。
振り返りが終わり改めて現状に目を向けた話に戻してみた。
母親はカウンセリング当初、食事のことがなければ何も心配はないと言っていたが問題が食事だけではないと思い始めていた。
「なぜ」次女の心が閉じていることに問題があるように気づいたようだ。
家族全体で見守り刺激的なことを言ったりしないでゆったりした雰囲気にしましょうと言った。
次女がなぜダイエットに固執しているのかその根本的な要因を明らかにすることが大切だと伝えた。
カウンセリングを続けているうちに次女の生理も止まってしまい母親はハラハラしてうっかり、
「将来子供を産めなくなるよ」
と言ってしまった。すると次女は、
「子供なんか産まないし欲しくない。結婚も考えてない。」
と返答してきた。
高校生なので自分の考えもあるが何より家族や他人からあれこれ言われても聞く耳をもっていなかった。
かえって反発を誘ってしまう。
成すすべがない状態に母親も憔悴していた。
家族は彼女の居場所をなくさないように声をかけたりしている。
お父さん・お母さんには冷静になり長期戦を考え娘さんを大きく受け止めてほしいと話す。
母親へのカウンセリング
母親は娘の摂食障害は自分が原因ではないかと思い精神的に落ち込んでしまったこともありカウンセリングに通い始めた。
定期的にカウンセリングに通い心の内を話すことで母親自身が変わってきて元気に明るくなってきていた。
母親は毎月カウンセリングに来ることで元気が出ますと話している。
家族問題のカウンセリングで一番大事なことは問題が知らず知らずのうちに家族全員にまで影響がでてしまう点である。
悪い方へいくのものんびりであれば良い方向へいくのものんびりである。
全体的な大きな流れが良い方向へ向かい始めれば問題は小さくなる。
今回の件でも母親が自信を取り戻し始めたことから徐々に家族の一人一人が変わり娘さんにもその効果は影響を与えることになる。
子供にとって親はいつまでも強い存在である。
強すぎることは良くないが自信を持てないこともまた子供に影響を与えてしまう。
少しずつではあるが良い方向へ向かい始めるでしょう、と話をする。
母親の強い心で次女をゆっくりとみることで次女の心の奥に何がひそんでいるのか分かるようになる。
それは家族にしかできないこと。
娘さんが家族と同じテーブルでワイワイと話しながら同じ食事を食べる日はそう遠くないと私自身も強く願いながらカウンセリングは今も続行中である。
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