感情的にわめき次男に隔離された妻をそれでも愛していた夫

若いころから精神的に多少の問題があったが家族で何とかカバーして世間に知れないようにしていた。足腰が丈夫なので近所に出かけては近所の方が死んでしまった話をまことしやかに話したり、そこの家の方から怒鳴られたりと家族も困り果てていた。

家族は精神科を受診してもらいたいと本人に伝えるが本人はどこも悪くないと病院の受診を拒否していた。

ある日、強引に老人施設に入所させたが腕力も強く大騒ぎをするので退所させられた。

家族も旧家なので世間体を気にして近くの病院は受診させない。介護保険サービスもあれこれ老妻の異常行動がばれないようにと本人の事より世間体を重要視して対応していたので、本人の気持ちを受け止めたり、話を聞いてあげることもしなかった。

何とか本人の異常行動が世間に知られないためにどうするかばかりを考えていた。家族が疲れ果て老妻の夫が精神的にまいっているのでと相談に来られた。

老妻は話を聞いたりすることもできないし人嫌いなので信頼がおける人は次男さんのみであり、薬は飲まないで捨ててしまう。家族は本人のケアーはあきらめ状態でいた。

ご自宅に訪問して夫の気持ちをリラックスしてもらいながら話をしていると別室にいる妻が大きな声で、

「 帰れ!出ていけ! 」

と怒鳴りだした。
夫はもっといてくれと言うのですがご自宅では話が出来ないので別の場所で話すことにした。

奥様は前から少しずつ精神的にずれが生じてきたと話す。夫の立場では今からどうすることもできないので、何とか病院に入院して病状を安定できればと話す。

次男はお母さんの病状が悪くなるが世間体を気にして病院探しも積極的にしないで、お父さんに見てもらっていた。

ある時 深夜お母さんが次男さんの家に行き横に変な男が寝ているから助けてほしいと大声で騒ぎだしていた。

近所の方たちで知らない人はいない。

ここまでにならなくても病院に行く手立てはあるのにあまりにも世間体を気にし過ぎたので、後手・後手になってしまった。

夫もいくら前からといっても家で落ち着いて入られないのでディサービスに毎日通っていたがディサービスのスタッフにも老妻は嫌味を言ったりでままならない。

夫は次男さんの冷たいやり方に批判的であったが妻の事は何とかしたいと思っていた。でも妻は夫を変な人と見ているので、夫も妻に入院を切り出せない。

夫婦のきずな

強制入院そして夫は妻に会いたがるも次男が拒否、そして妻の他界

やっとのことで隣町の精神科の病院に強制入院した。
入院すると精神的に穏やかになり妻本人も楽になっていたと話す。

夫は妻が大騒ぎをしている時は早く入院して欲しいと思っていたが一人になると寂しくなり一緒に生活できないかと思っていたが次男は病院の名前も場所も教えない。

お父さんの事は考えてなく次男は、いくら寂しくても朝1度安否確認に来てそのままなので家族愛は期待できない。夫は誰かと話していたいというので介護保険サービスでヘルパーやディサービス・ショートステイを利用するようになり少し生活に暖かさを取り戻してきた。

夫は、自分の考えなど次男さんは聞かないのでそのことに大変不満を持っていた。

夫はどんな妻でも妻なので、入院してる病院に見舞いに連れてって欲しいというのです。しかし次男は今はダメだと合わせようとしない。夫も病気を持っているしいつどうなるかもわからないから会いたいというのですが。頑として聞き入れてもらえなかった。

次男がお父さんの面会希望を出しても拒否する理由がわからない。

病院での取った写真は何枚かとって見せてくれた。妻に会いたいと言っている寂しい気持ちを切々と話す。

1年くらいして老妻がなくなったと聞いた。 

夫は、亡くなった妻に合わせてもらえなかった。と。
次男がお骨だけを持ってきて部屋の棚に置いてあった。

夫は亡骸にも会わないままで永遠の別れになり次男の行動を受け入れられず寡黙になってしまった。
長い間 連れ添った妻に最後くらい合わせてもらいたかった。と何回も話していた。

もう少しお父さんの心をくんであげられれば、悲しみは深くなかったでしょう。

妻への思いは夫にしかわからない。
お父さんの悲しみに寄り添って受け止めるしかなかったが最後に、

「あなたに聞いてもらえてよかった。」

とぽつりと話した。

お父さんの姿が小さく見えた。 

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