東京から8歳の息子の奇声を心配した母親からのカウンセリング予約
ある母親から自分の息子に関して心配ごとがあるとカウンセリング依頼が入った。対象は8歳の男の子で言葉を伝えることに敏感で自分の考えが伝わらないと「キー!」と奇声を発するとのこと。
こうした行為を母親は心配していたが病院や他のカウンセリングでも原因がわからず期待するような効果が得られず困っている時、人づてにとまり木を知りカウンセリング予約より来談にこられた。
早速、子供の背景を丁寧にヒアリングしていくといくつか分かってきたことがある。
息子さんは3歳から小学校入学前まで夫の仕事の関係で外国で過ごしていた。
運動が嫌いで外にも出たがらない子供であることは早いうちから理解していたが、母親としては外で何かトラブルに巻き込まれるくらいならば家に居て目の届くところにいてほしいと思っていた。
外国での生活は日本と比較し危険が多く、とくに外出の際は一定以上の緊張感が伴う。相対的に日本にいるよりも子育てが過保護になることはこれまでのカウンセリング経験から分かっていた。
今回のケースも過去の事例と同じであった。母親もそのことは理解しておりカウンセリング時に、日本に帰ってきても用心しすぎる習慣が簡単には治らないと言っていた。
加えて一人っ子なので何か起こる前に母親が先に注意したり、失敗しないように気を付けているので子供のやりたいことは何なのかを母親がゆっくり感じてあげようと思っていなかった。
母親は失敗しないことが良いことだと思っていたので、転ばぬ先の杖になっていた。
カウンセリングを続けていくと子供の奇声が始まったのは幼稚園に居るころからであることが分かってきた。年齢にすると5歳から8歳である。
8歳という年齢は子供の自主性が芽生え本人のやりたいことが出てくる年頃である。
行動欲求が増加する時期に母親が危ないとか、今は早いからまだダメだと頭ごなしに押さえつけてしまうことにストレスを感じイライラして奇声を発していたと判断できた。
母親は子供が奇声を発する頻度が多くなると心配になり病院に行ったり、あちこちのカウンセラーを尋ねたりしてなぜ奇声を発するのか尋ね歩いているが納得の回答が得られなかったと話す。
カウンセリングを渡り歩き東京から、とまり木に来た経緯と母親の心理
そのような経緯で母親が私のところに来た。
初対面の印象として子供の心配もあるが母親も相当に心の疲れがたまっており子育ての方向性に悩みがあることは感じていた。
本人の悩みは子供が奇声を発する原因を知り治したいということであるが潜在的に自分の考えを聞いてもらいたいという母親の本音も早い段階で理解していた。
なぜならばカウンセリング時における母親の話の主語が時折、子供ではなく母親自身であることを私は見抜いていたからである。例えば、
「子育てを完璧にしているのになぜうまくいかないんだ?」
という言葉の裏に自分の行動に対して他人の理解を得たいという感情が潜んでいることを理解していたからである。
そこでカウンセリングの組み立てを子供の奇声だけにフォーカスするのではなく母親も対象範囲とした。
母親が幼稚園未未満の息子さんを守る意識のままで何ら成長していないので、まず母親の成長を促すことで結果的に子供の奇声にアプローチする方法をカウンセリングの骨子とした。これが後々、効果を出すことにつながった。
具体的にカウンセリングで気をつけるようにしていたのは、以下のような点においてである。
「親が子供を守るためには何でもしてきた。」
→しかし子供は日々成長して自立の道を歩んでいくことを考えようとしてなかったのでは?
守ってあげることから年代に合わせて子供の成長を見守ることが大切になるのですよ。
と伝えた。
母親の心に変化をもたらすようなリードを取ることで、心の中にある子供の印象と実際のかい離を小さくするようにした。
カウンセリングを続けていく中で、
息子さんの縛られ窮屈になり自分のしたいことが出来ないジレンマで騒ぎたくなる気持ちを分かってあげてはどうですか?
と質問すると母親は、
「子供を守ってあげるのは親の役目だと思っていた。」
と言葉少なげに話をした。
子供は未完成のところがたくさんあるが自分の殻を破って大きくなろうとしている。子供の行動は心配で見ていられないこともあるが、色々な体験を通して大きく成長し大人になっていくのだから親はやさしく見守ることも大切な子育ての1つですよと伝えた。
カウンセリングを重ねると、子供が「お母さん!」とすがっていた頃の守りの気持ちは変わっていない様子だが一方で自分も変わる必要があるとの意識が芽生えてきた。
当初のプログラム通り、母親として子供が今、何をしたいのかを冷静に見極め実行することが大切で、例えば家族の会話を多くし子供との接点を多くするなどして子供の成長を受け入れていくことでお互いに無理なく楽しみながら見守るようにしていはどうかと伝えた。
カウンセリングの経過により子供に一定の変化が出てきた
カウンセリングの経過と併せて子供の成長をヒアリングしていくと子供に変化が始まったことが分かった。
小学校の中学年になると母親のそばにいるより友達と遊ぶことが多くなり新学期になると、
外で友達と遊べるようになった。
担任の先生も変わり子供の周りの環境が変わってきたことで自然に心も成長していった。
友達と遊べるようになると奇声も徐々に少なくなってきたと話す。
母親は子供が外で遊んでいるとケガしないかとか勉強の時間まで帰ってくるかと心配をしている。そのたびに母親に子供の行動の先にある結果がわかっていたとしても先に言葉を挟まず、子供の失敗を母親が恐れないようにするようアドバイスした。
子供は失敗しながら成長するものだと話すとその時は理解している様子が見えるがすぐ心配事を考え出す。
そんな時は子供を自由に行動させて夜はどんなことしたのか質問して親子の会話を楽しんでくださいと話す。
母親の気持ちは頑なで子供が大きく成長している間も、子供を守ることばかり考えていた。子供の成長と共に母親も接し方を変えていかなければ親子の関係は良くならないでしょうと話した。
カウンセリングの最終段階、母親のことばに大きな変化がでた
ところが来談時からだいぶ経過し正確にどれくらい経過したかはここでは伏せるがある一定の期間が経過した後、母親にある変化がでてきた。
それまでは子供の話、母親の話、と2つの話がそれぞれバラバラに出ていたのだがカウンセリングが経過することにより親子の話になってきたのである。
母親は子供の話をゆっくり聞けるようになってきたので、これでいいんですよ。
と伝えた。
この頃になると母親は子供の行動を心配をすることも少なくなり、子供と会話をすることが楽しいと話していた。
関わって数年以上になるころ息子さんは奇声を発しなくなり母親も子供とのかかわりに自信が見えてきた。
そこでカウンセリングは一定の効果を得たと判断し定期的な来談は終了とした。
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