心理カウンセリングに来た母親は娘の本当の危険信号を見落とす
私立一貫校に入学して親子共に勉強をやれやれと思っていると、子供に変化が出てきた。
食事が食べられなくなる。
朝が起られない。
学校に行かれない。
体調不良になり学校に遅刻がおおくなっているので親は、単位が取れないのではと心配している。
今まで勉強も一生懸命に頑張り親の願いどおりに成長してきたのにどうして?
お母さんは娘の変化にきづいてどうしたらいいかとクリニックを受診させたり・スクールカンセラーに足しげく通い相談したりしている。
お父さんは娘の成績が良くなれば親が進路を決めてしまえることもあり、しっかり勉強するように口うるさく言っている。
夜、お酒が入るとその説教もエスカレートしてくる。
娘の心の内を聞こうともしない。
結果として、娘さんはお父さんを嫌うようになる。
お母さんも小学校のころは勉強・勉強と娘のおしりをたたいていたと話す。
今は娘さんの体調をよくすることが大事だと思っているので、ご主人にも勉強の事は言わないでくださいと頼むがお父さんは話を聞こうとしない。
お父さんは娘さんの現状を見ないで、高校の留年はやってはいけない、就職にかかわると言っていたが1年たっても娘さんの状態が改善されないので、口を出さなくなりお母さんはやりやすくなったと話すが、けっしてお父さんの理解を得られたわけではない。
このころになると娘さんは親に何も言わなくなる。お母さんは今まで娘さんの話をじっくり聞いたことがありますかと尋ねると忙しさもあって向き合って話をきいたことはほとんどなく、娘さんの顔色も体調も見ていなかった。
娘さんは親に言っても仕方ないと距離を置いているのかもしれませんよ、と伝える。
お母さんは娘さんの日常生活の規律が守れなくなっていることから一番の改善点として就寝時間と起床時間を守らせるようにした。
就寝は深くても午前1時を実行中であるが目を離すと守ってないとのこと。
高校2年の目標は単位を落とさないようにする、と強気に話をしているがお母さんの目標で娘さんの目的ではないでしょう。とつっこんだ。
一般的に両親は受験時はいろいろ気を配っていたが試験をパスすると気を使わなくなる。
新学期が始まると友人関係・勉強がついていけるか等、新しい環境になじめているのか気にかかることが多く、受験のとき以上に子供を気に掛けなければならないのに大きな目標を達成したうれしさから安堵、安心してしまい子供の危険信号を見落としがちになる。
お母さんは、娘さんが中学1年から学校になじめないでいるのに何とかなると根拠もなく自己完結していたと話す。
娘さんは若いから時間が経てばだんだんなじめると思い娘さんに真正面から関わろうとしていなかった。
中学のころは心身が大人へに変化していくので、とても微妙な時期なのに体も大きくなっているので、安心してしまったと話す。
娘さんは勉強も難しくなりついていくのに大変なことも親に言えないでいる。
ストレスは体にどんどんたまって体調不良になり意欲が低下してしまう。
そんな時こそお母さんが娘さんに寄り添いしっかり話ができる状態を作っていくことで娘さんは心を開いていけるようになるのですよと伝える。
娘さんの心を安心させることで症状が軽くなっていくこともあるのです。
勉強が遅れることも心配でしょうが 元気を取り戻せば追いつけるでしょう。
体調の変化を立て直すのは、一朝一石ではできません。
もっとお父さん・お母さんが娘さんの心の成長に真剣に寄り添ってほしいのです。と伝える。
子育てが本当に大変なのは中学・高校の多感な時期
心理カウンセリングを開始した当初はカウンセリングに対して懐疑的なところがあり人の家庭の何が分かるものか、といった感情もあることは理解していた。カウンセリングとは目に見えない心の疲れを相手にしている以上、このようなこともたくさん経験してきた。
お母さんの心が少し変わってきたのはカウンセリングを通してお母さんが、娘さんの体格と心の成長は別だと理解できたこと、時間をかけて娘さんに寄り添って真剣に向きあうようになってきてからである。
娘さんと話ができるようになると苦しんでいた内容がわかり受験ばかりに気を取られていたことを反省していた。
お父さんはなかなか娘さんの心の成長を理解できなくて関わりをやめてしまっているが娘さんを立ち直せるには、お父さんとお母さんが娘さんに真剣に向き合い・安心させる関わりが大切ですよと話すが時間がかかると話をしていた。
今はお母さんが娘さんに寄り添えるようになっているので、娘さんもゆっくり改善されてきた。が、お父さんとは沈黙状態である。
そんな時、下の子の受験がありお母さんは上の子と下の子の扱いが難しいと話す。
中学から高校は子育てが一番難しい時期です、両親が力を合わせて、子供を支える事が必要なのに父親は大半が仕事に時間をとられ子育てから抜け出ているケースが多いものです。
お父さんとお母さんの連携が大切です。
娘さんの進路も娘さん自身が考えていくもので、そのための情報提供は良いでしょうが親が全てを決めるものではないのです、と伝える。
多くのご両親はもう高校になったんだから親の関わりはいらないと勝手に思っていますがそうではないのです。まだまだ親に相談したりして、今の悩みや将来の不安を少なくしたいのです。
親も子供も初めての経験だから手探り状態なのです。しっかり向き合って話し合いなが子供の自立心が芽生え歩んでいけるように親のサポートが必要なのです。
思春期の子供との付き合い方
今回のケースは戸塚だが思春期の子供を持つ親からの相談は年々増えている。
少子化で日本に子供が少なくなっているにもかかわらず来談件数は増えているのだ。
一つには社会の多様性とコミュニケーション方法の多様化があるのではないかと思っている。
昭和を生きてきた世代にとって最大の情報源は親の意見とご近所さんからのアドバイスであった。いわゆる「近所の口うるさいおじさん」です。
しかし昨今ではそのような行為は敬遠されるだけではなく過保護な親の攻撃対象にすらなってしまう。時代の変化だと言えばそれまでだろうがそれによる弊害もまた出ている。
子供にいたって言えばSNSやメール、LINEなどスマホによるデジタルなコミュニケーションが主流になり電話すらも嫌がる傾向が出てきた。
昔はいじめと言えば無視とか殴る蹴るなど直接的なコミュニケーションだったが今は、会員制のサイトの中で本人に見つからないようにこっそりと悪口を書くなど直接的な対話ではなくどこの誰だかわからないような見えないいじめになってきている。
直接対話が何よりのストレスになってきたのだろう。
合って話すよりも間接的に立ち回ることで逃げ道を常に作るような時代になったことを表している。
デジタル技術の台頭によりスマホ1つであらゆる情報を取得し前知識を豊富に蓄えることができるため時として親も答えに戸惑ってしまうこともあるだろう。
情報量だけで言えば親も子供も同じレベルになってしまっているのかもしれないが親の意見と言うのは経験に裏打ちされており大きな価値があると私は信じている。
知識が多くても活用出来なければコレクションに過ぎません。
知識量は多くてもその活かし方が身についていないのが思春期の危うさでもある。だから親はやきもきとしてしまう。
そんな時、わたしはそっと親にアドバイスすることがある。
「あなたたちの子供なんだから自信を持ちなさい。間違っているかもしれないけれどもそれは大人になるための経験を積んでいるだけのこと。
目の前の1つ1つに目線をおとすのではなく大きな目線で全体を見てみましょう。自分が経験してきたことを思い出してみましょう。子供が親の背中を見て育つのは今も昔も変わりませんよ。」
と。
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