親思いの息子が結婚したら変わってしまった
ある日 60代の女性から来談カウンセリングの問い合わせがありました。
カウンセリングをゆっくり待ってられない様子で、
「直近でいつできますか?」
と言われたので早々に日程を決めました。来談に入ると表情が暗いので、
「どんなことにお悩みですか」
と尋ねると、
「結婚して二人の子供がいるのですが、その息子のことで悩んでいます。結婚する以前は、同居していたのでいつも私の話を聞いてアドバイスしてくれるので、息子と話す事が楽しかった。」
と話し始め、
「結婚することになり家を出たのですがお嫁さんは私達の家に来ても楽しそうに話をしないし、お食事を一緒に食べましょうと言っても食べてくれないのです。」
と表情も暗くさらに、
「当初は恥ずかしがり屋なのかと思っていたのですが何回来ても何も食べないのです。だから話の間が持てないので、長くても1時間くらいで帰ってしまいます。」
と話しました。少し話慣れてきたて思いが吹き出したようで堰を切ったように話し始めました。
「1年後、孫が生まれる事になり私達も初孫なので楽しみにしていたのですが、出産お祝金は、お嫁さんの実家が何十万なので、金額をそろえて欲しいと息子がメールで連絡してきたのです。
なぜお嫁さんの家と同じにする必要があるのかそのころから息子の言動に変化を感じていました。ベビーベットも買って欲しいとカタログを送ってきたので有無も言わさずのやり方に驚きました。」
「夫は怒っていましたが私はお嫁さんの家と差がついては息子がかわいそうと思い、私の虎の子からベッド代を夫に内緒で息子に渡しました。
ところが息子はそれお当然のように思っていて、お嫁さんの家からあれも買ってもらったとかあれこれ言い出すので、あんなに親思いの息子がどうしたのかとイライラと寂しさが湧き出てきました。」
状況をさらにヒアリングすると母親の本音が顔を出し始めた。時系列でまとめます。
我が家にとって初孫なので「いつ会いに行ったらいいの?」と尋ねると「お土産はベビー粉ミルクとおんぶ用のヒモを買ってきて」と言われたので、デパートで買って持参したときのこと。
赤ちゃんは抱っこさせてもらったけれどかわいいと思うより緊張してしまい、そわそわしてゆっくり抱いていられなかったと話す。
昼食時になってもお茶だけで何も出てこないので結果的に短時間で帰る事になってしまった。
ある訪問の時。
息子は何も言わなかったが大型スーパーに連れて行かれ、あれこれとカゴに入れて会計は親払いにされてしまった。
お宮参りに招待されてもお祝い金と言われるばかりで、お食事はないままであることにも違和感があるようだ。
さすがここまでされれるとかわいい息子といえども言いなりにはなれないと思いお祝い金も、ネットで調べて相場で渡すようにしたとのこと。
2年後、二児の誕生でも同じようなことを息子が言ってくるので、親の出せる範囲でお祝い金を渡した。
そんなある日、息子が突然来て、
「マンションを買いたいがお金を出してもらえるか」
と相談され、これまでの嫌な思いもあり、これを許したらずっとせびられると思い夫とマンション購入費用は出せないと断った。
親元にいた時は、息子は病弱な私を気づかい夫より頼りにしていたのに結婚後はお嫁さんに全てを合わせてしまったことにショックを受けていた。
そのことが原因なのか、病気が悪くなり寝込むようになり、息子に体調が悪いと言ったら、
「僕は自分の家族を守るのでいっぱいだから、お父さんと上手くやってね」
と言われたことがショックだった。そして、
「確かに息子は、仕事と小さい子供の育児もあり忙しいのはわかるけれど マンションもお嫁さんの実家に近い場所に買い、毎日のように実家に食事に行っていると聞かされました。これでは息子も孫もお嫁さんの実家にとられたようで、嫌なんです。」
と話す。
母親は一気に話されました。
カンセラーとして、親子の絆の規定があるわけでもないので、こうですよとは話せないのですが、子供に関する相談は多いことを説明した。つづけて、
「親子の絆について考えてみましょう。」
と母親に問いかけました。
親子間の距離の取り方
親子間の距離の取り方は家族間における大きなトラブル要因になると思います。
その距離は成長過程で少しずつ長くなるように意識を持たなくては、急にはできません。
お母さん達は、子供が小さい時は親の役目が多いので密着してあれこれ一生懸命に育児に対応します。
子供の成長に合わせて親の役割は少なくなるので、徐々に手を外していく事が必要なのです。
親は子供が小さい時も学生になっても社会人になってもあまり変わりなく同じように世話をしてしまいます。
息子さんが大学生になり、親元を離れたりするなど大きな変化が訪れると、世話が出来なくなることで親の役割について考え始めます。
しかし、結婚後に親と同居していると、お互いに依存度が高くなります。
お母さんの愛が強すぎて子供が独立心を育めない例もたくさん見てきました。
現代は子供が一人か二人なので親の目が届き過ぎる傾向にあります。
一般的に子供が親の手から離れたいと思う時期は思春期といわれ、この時期に心身の成長があります。
否定はしませんが、中・高校の受験で母親と子供が一丸となって向かっている家庭をよく見ますが現代の象徴だなと感じます。
(母親はその頃をとてもやりがいのある時期だと言う方もいます)
子供の成長期について少しまとめてみました。
:親は子供の自立心が身につくための訓練を、成長に合わせて実践していきましょう。
:子供が社会人になっても親の都合のいいようにコントロールしないようにしましょう。
:子供は母親が喜ぶことを心得ているので、いい子になってしまいますがいい子になりすぎるのは要注意です。
:子供は親の所有物ではないので、子供とのいざこざは成長している証と思いましょう。
少し考えてください。
空の鳥たちや山の動物達は巣立ちの時期が決められています。しかし、人間は巣立ちに決まりがなく個々が決定しない限りどこまでも親離れ、子離れが出来ません。
子供達は、結婚して家庭を持つことで親になる準備が始まるのです。
「息子はお嫁さんの言いなりになった。」
と批判せず、先輩の親として自信を持って息子に意見を言ってください。
結婚し子供が生まれて親になる第一歩を踏み出します。何の知識もなく初めての子育てに突入するのです。
子育てでは、夫婦間がぎくしゃくすることもあり、知らないことだらけの中でお互いに伴侶を批判したり、無関心になったり右往左往の連続です。
ある新米お母さんから、
「赤んぼが泣きながら夜中に何回もミルクを欲しがるので眠る時間もありません。夫は何も手伝ってくれないのです。」
と電話相談が入りました。
生まれて2か月くらいは確かに大変です。しかし、その毎日が母子の絆を強くするのです。
赤ちゃんの成長はとても早く親の成長が追いつかないことが多々あります。
核家族が多い現在、辛い時に頼れる育児の先輩がいない中で育てるのは、苦労が多い事でしょう。
相談に来た母親に守秘義務で許される範囲で他の例を話すと、
「振り返ってみたら私は息子に依存して過ごしていたと気づきました。息子を自分の一部と思っていたようでした。」
「なぜか夫から子供を守るのだと思い込んでしまい、夫不在の子育てをしていました。」
と話す。
愛は深ければいいとは一概に言えません。
「息子さんの結婚を機に親の役割から卒業したと思、これから先も長いので夫と二人の生活を見直しをしてみましょう」
と話すと母親は、
「夫から心が離れているので今から再構築できるか不安ですが、ゆっくり時間をかけて夫婦の原点をめざしてみます。」
と話す。
相談を受けて思うことは、母親は夫より息子を頼りにしている家庭が多いようです。
たいていの場合において、息子の結婚を機に母と息子の絆に大きな変化が生じます。
当初はショックでしょうがそのような試練はどの親子でもたくさん経験するのです。
哀しい思いの中から、親も子も独立心が芽生え、お互いの依存から解き放されるのです。
来談の母親、も我が子が悪いわけでなく良くある親子の試練とわかりカウンセリング後にはスッキリした雰囲気になっていました。
息子や娘が結婚したら親子の距離を最大限に伸ばし、親は見守り役に徹して子供たちの家庭が健康で幸せに過ごせるように祈るのが適度な距離ではないかと考えます。
守秘義務について
こちらに紹介している事例は承諾を得た後、個人が特定されない範囲内での記載となります。
心理カウンセリンラーには守秘義務がございます。
カウンセリングを通して知り得た情報を本人の許諾なく開示することはございません。