貧乏だった父親のもとに大金が転がり込んだ悲劇
小さいころから父親の仕事が何なのか知らなかった。姉弟が多く母親は貧乏の中5人の子供を育てるのに苦労していた。父親は選挙になると忙しく家を出るようになり何か手伝いをしていた。今思い返してみてもおそらく定職はなかったと思う。今で言うところのフリーターだった。
外面が良くいつもにこにこしているので周りからは重宝がられていたようだ。
母親は60代で心労がたたり脳梗塞で倒れて長期入院となった。父親はお見舞いにも行かないで遊び歩いていた。お金がないので遊びも特に借金を作るほどではなかったのが救いといえば救いだった。
そんなある日突然、次男が職場の事故で亡くなってしまい父のもとに大金が舞い込んだ。これまで大金を手にしたことがないので、父親初め田舎の親戚・子供たちにいたるまで大騒ぎとなった。
次男は未婚で家族がいなかったので残された兄弟である父親に大金が払われた。
母親が長期入院しお金がかかるので娘たちが結束してまとまったお金を治療費として父親から出金させた。姉達が母親の成年後見人になり入院費を管理していた。
残っているお金の一部で建売住宅を買い長男家族が住んで父親を介護する話しになったが姉達は不平等だと言って賛成はしなかった。
そこで父親は実弟の住む田舎に移り近所に中古の家を何百万かで買った。その時、父親には付き合っていた女性がいて彼女にもお金をあげていたと言う。
田舎の家に二人で住む予定でいたが女性は時々顔を出すだけで一緒には住んでいなかった。
当時父親は80歳後半なので本人がいくら元気だと言っていた。
疎遠だった実弟が遺産相続について公正証書を勝手に取り交わす
しかし父親の実弟が、家族みんなが気にしているので亡くなる前に財産分与の手続きをしてもらいたいと懇願し、公証役場に連れていき財産のすべてを実弟がもらえるように書かせたと言う。
実の息子はそんな事になっているとは何も知らされてなかった。遺言書を書かせたところ、書面が息子の所に返されて来たことで真相をしることになった。
こんな状態でも息子は姉達に相談できないので私の事務所に相談に来た。
父親は小さいころから信用できないところがあったが大金が入るとガラッと人が変わり息子の言うことなど全然聞かなくなってしまった。常におおいばりしていた。
しかし実の息子には決してお金を見せたり 渡そうとはしなかった。
お金が入った途端、音信不通だった田舎の実弟の家に急に行き来しだして田舎に連れてってしまった。
どこで知り合ったか怪しげな女性まで付きまとっている。お金が目当てなのは見ればすぐわかるが父親にはわかってない様子だった。挙げ句、父親はその女性と結婚も考えていると息子に話していた。
後になって、父親から実弟に遺言書を書かされたことを聞き警察に相談したが親子・親族間のトラブルは介入できないと断られてしまった。こんなときこそ警察の助けが必要なのに警察は何にも聞いてもくれないとがっかりしていた。
しかし実弟がそのような行動に出ていることを知った以上、このままではどこまでやられてしまうかもわからないので、父親の行動に危機感を抱いたと話す。
息子と同居してすぐに父親は認知症になってしまい細かい事はどんどん忘れてしまい当時の勢いはなくなっていた。
父親の財産を守ろうとした奔走した結果、離婚
父親のお金をめぐり息子もそれまでの息子ではなくなってしまっていた。
同居が始まってしばらくしたある日、妻が離婚をきりだしてきた。
子供も思春期なのに親やおじいさんの問題に巻き込まれ落ち着いて勉強もできない状態となってしまい家族は大混乱状態になっていた。
結果として孤独になってしまった息子が父親の介護をすることになった。
しかし心中は複雑で心からやさしい気持ちにもなれなかった。
そして大半のお金も消えていた。
父親は息子が就労しているので、日中一人で留守番していたがたばこを吸ってベッドの布団を燃やしたり・灰を落としたりと安心していられない。しかし介護度が低いので施設も入れない。
特別養護老人施設に入所申し込みをしたら600人待ちと言う。
母親も亡くなり介護料として父親から預かったお金はかなり残っていたが父親には戻さず姉たちが分け合うと言う。
しかしそれでは話が違う、ともめ始めると姉たちは弁護士を立て返金しない意思表示を明確にしてきた。
息子にとっては姉たちも信じられないし住んでる家も姉たちは同意してくれないので、会って話し合いたいと言っても拒否してきたと言う。
息子はカウンセリングに来るたびに、大金を手にすると人が変わると聞くがまさか自分の家でそうなるとは思わなかった、と信じられない様子で話す。
いきなりみたことが無いお金が転がり込んできたところまでは良かったが、思い返せば自分の家庭も崩壊し姉達ともケンカ状態、何一ついい事がなかったとしみじみと語っている。
小さい時は姉達とも仲良くしていたのに今はいがみ合う中になってしまいとても寂しいと話す。
カウンセリングを長期間続けているうちに父親は90後半になり在宅では介護しきれないので介護施設に入所することとなった。
息子も定年を迎え一人で生活している。父親は息子の顔も忘れかけているがどんな親でも親だから世話をしていかなくてはと月数回は面会に行っている。
父親には相談する人もいないので時々訪問して思い出を話し元気になっったところで、
「また来るね」 と言って帰っていく。
いまの楽しみは実の子供とたまに会えることでそれだけが息子の生きがいだとも言える。
どこまでも終わりが無い家族間のお金問題
お金にかかわるカウンセリングは本当に救いが無いことが多い。今回はカウンセリングを受けている対象者の父親に端を発したケーススタディとなっているが他にもお金にまつわる相談は年々増えてきている。
哀しいのはお金関連の相談には近くに必ず相手がいると言うこと。
外的な要因や突発的な要因ではなく誰かが常識的な範囲での取り決めを破り意図的に自分に利益が転がり込むような絵図をかくことが心の疲れを引き起こしている。
世の中が厳しくなればなるほどお金問題に関するカウンセリングは増えるのである。
いまはカウンセリングを受けている息子さんのお父さんが無事に天寿を全うすることを祈るばかりです。
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